71 病院 応接室
応接室に向かい合って座っている、玉緒と山下、川上。
テーブルの上に一枚の男の写真が置いてある。
玉緒:誰ですか、この人。
山下と川上、顔を見合わせる。
川上、メモを手に取り。
川上:(読み上がる)東京都目黒区鷹番、火野剛(ひのつよし)、三十五歳、自称トレーダー。
玉緒:トレーダーって何ですか。
山下:なんでしょうね。
川上:株を売り買いする人ですよ。
玉緒:その人が犯人なんですか。
山下:はい、先日自首してきました。
玉緒:何でそんな人が、わたしに?
川上:株価が下がって苛々していたそうです。誰かを傷つけたくて町を徘徊しているときに、たまたまあなたと遭遇したそうで。
玉緒:たまたま?
川上:はい、たまたま。
山下:あなたは別に誰かに恨まれたりしていたわけじゃないんです。良かったですね。安心してください。
にっこりと笑う山下。
玉緒、犯人の顔写真を眺める。
71 医院 会客室
玉緒和山下、川上在会客室里相向而坐。
桌子上放着一枚男性的照片。
玉緒:这个人是谁?
山下和川上对视了一下。
川上拿起笔记本。
川上:(读出声来)東京都目黒区鷹番、火野刚、三十五岁、自称是炒家。
玉緒:炒家是什么?
山下:是什么呢?
川上:就是买卖股票的人。
玉緒:他是犯人吗?
山下:是的,他前几天自首了。
玉緒:这样的人为什么会对我……?
川上:据说是因为股价下跌感到焦虑难耐。他想着随便找个人报复一下,在街上游荡的时候偶然碰到了你。
玉緒:偶然?
川上:是的,偶然。
山下:你并没有跟谁结仇。这样还好,请放宽心吧。
山下微笑了一下。
玉緒望向犯人的脸部照片。
72 バレエ団の素舞台の上 あるいは稽古場
なにもない舞台の上で踊る熊井卯佐美。
玉緒M:たまたまわたしだった。
跳ねる。
玉緒M:たまたまわたしだった。
跳ねる。
コスチュームの白いスカートが揺れる。
玉緒M:たまたまわたしだった。
舞台の上を軽やかに跳ねる熊井卯佐美。
男の声:退院の日が決まりました。
72 芭蕾舞团的空舞台上 或者说是排练场
熊井卯佐美在空空如也的舞台上跳着舞。
玉緒独白:只是偶然碰到了我。
卯佐美跳着舞。
玉緒独白:只是偶然碰到了我。
卯佐美跳着舞。
芭蕾舞服的白色短裙翩跹舞动。
玉緒独白:只是偶然碰到了我。
舞台上卯佐美舞姿轻盈。
男人的声音:我出院的日子定下来了。
73 中庭 噴水の前(夜)
男の顔、だいぶ包帯が取れており、数枚のガーゼで覆われているだけになっている。その顔は、バイク青年の顔にとてもよく似ている。
男:あなたのおかげで長い入院も退屈せずにいられました。ありがとう。
玉緒、男から目をそらし噴水の前の像を見る。
玉緒:あの人、誰なんだろう。
男:アフロディーテですよ。ギリシャ神話における美の女神。
玉緒、アフロディーテの顔をじっと見る。
玉緒;じゃああれが世界の思う究極の『美』ですか。
男:かもしれないですね。
玉緒:……。わたしのほうがぜんぜん綺麗。
玉緒、男の顔をまっすぐに見る。二人、しばらく見つめあって。
玉緒:あの、お願いがあるんですけど。
73 院子里 喷泉前(夜)
男人脸上的绷带差不多都取下来了,只剩下贴着的几片纱布。那张脸神似摩托车少年的脸。
男:多亏了你,住院这么久也没感觉到无聊。谢谢你。
玉緒从男人身上移开目光,看向喷泉前的雕像。
玉緒:那个人是谁来着?
男:是阿弗洛狄忒,希腊神话里象征美的女神。
玉緒直直的盯着阿弗洛狄忒的脸。
玉緒;那这就是大家心中的『美』的顶点了吧?
男:可能是吧。
玉緒:……。我比她漂亮多了。
玉緒直视着男人的脸,两人短暂地对视。
玉緒:那个,有件事拜托你。
74 病院 診察室
白倉、眉間に皺をよせている。手にしているのは一枚の画用紙。
それは、男の描いたピアノ教室の少女の顔だ。
白倉:これですか?
白倉の前に座っていた玉緒、うなずく。
白倉:まあ、できなくはないです。特徴もつかみやすい。ですけれど。
白倉、カルテを開き、見る。
白倉:こちらのお顔でしたら、以前のお客様のお顔のほうが、なんといいますか。
黒岩:美人。
白倉:分かってる。わざと言葉を濁したの。
黒岩:すみません。
白倉:ほんとにいいんですか?こちらで。
玉緒、うなずく。
黒岩、手術の同意書を出し玉緒の前に置く。
もし何かあっても訴えない、という旨が長い長い小難しい言葉で書いてある。
白倉:とくに問題のある手術ではないですけれど、一応決まりですので。
玉緒、ペンを取りさらさらと署名する。
白倉:読まなくていいんですか。
玉緒:いいです。失敗しでも訴えませんから。
白倉:でも、どうしてこの顔に?
玉緒:たまたまです。
親指に朱肉をつけ、書類に拇印を押す。
立てた玉緒の親指が赤く染まっている。
74 医院 诊室
白倉眉间的皱纹蹙在了一起,手里拿着一张画纸。
画中是男人画的钢琴少女的脸。
白倉:是这样吗?
玉緒坐在白倉面前,点了点头。
白倉:嗯,也不是不行。虽说画上的脸部特征也很好把握……
白倉打开病例,看了一下。
白倉:和这位女士的脸比起来,您以前的脸还更……怎么说呢。
黒岩:漂亮。
白倉:我当然知道,只是故意没把话挑明。
黒岩:对不起。
白倉:您真的决定了吗?这张脸?
玉緒点了点头。
黒岩拿出手术知情同意书放在玉绪面前。
上面是旨在让人出了事就当成哑巴吃黄连的冗长的免责条款,文字也晦涩难懂。
白倉:手术虽然没什么大的问题,还是请您先签一下字。
玉緒拿过笔沙沙几声签下了自己的名字。
白倉:您不看看再签吗?
玉緒:不看了,反正哪怕手术失败无处申诉。
白倉:另外,为什么选择这张脸呢?
玉緒:偶然选的。
玉绪用大拇指按了下印泥,在文件上留下了指印。
玉绪站了起来,大拇指上还残留着印红。
先生の教えをお願い致します。
靡不有初,鲜克有终……