血塗られた鐘
その鐘が鳴った時、浅見光彦はリビングルームにいた。母親の雪江未亡人が部屋を出て、ようやく気詰まりな状態から解放された、ほんの一瞬後のことである。
雪江と浅見が、こんなふうに二人きりで顔突き合わせていることはめったにない。一つ屋根の下に住んでいて、しかもれっきとした実の母子でありながら――――である。
浅見光彦にとって、母親の雪江がこの世の中で最大の天敵だ。三十三歳にもなって、いまだに親の家から脱出できずにいる、いわば居候の身分では、母親のひと睨みに出くわすのがいちばん恐ろしい。
浅見家はとっくの昔、長男の陽一郎夫婦の代に入っている。したがって、雪江としても、できの悪い次男坊がいつまでも長男の家に厄介になっている状況には、常日頃、心苦しく思っているのだ。
母親が次男坊の顔を見るたびに、心ならずも、ふた言めには「早く正業に就いて、独立しなさい」と叱咤したくなるのも無理はないし、いくら叱咤してもされても、いっこうに効果が上がらない歯がゆさは、母子共通の悩みなのであった。
だから、雪江も浅見もおたがいになるべく二人だけになる機会を避けようとしている。こんなふうに深夜、リビングルームで二人が取り残されるのは、出会い頭のようなアクシデントといっていい。遅く帰宅した浅見が、お手伝いの須美子に頼み込んで、やっとこお茶漬けにありつけたばかりのところに、「須美ちゃん、ピップエレキバン、貼ってちょうだいな」と雪江が現れた。
須美子はついさっき、浅見のために風呂の支度に消えた直後だったから、否応なく、気まずいニアミスが成立してしまった。
妙なもので、こうなってみると、どちらもあわてて自室に引っ込んでしまうわけにはいかない。いってみれば、敵に後ろを見せるのを潔しとしない気分である。
浅見のほうはまだしも、お茶漬けに専念していれば格好がつくけれど、ピップエレキバン待ちの雪江は手待ち無沙汰きわまる。凝った首筋をおさえて、「もう十一時を回ったのねえ」などと、意味もなしに愚痴っぽいことを言った。
「すみません」
浅見はとりあえず謝った。
染血的钟
钟鸣之时,浅见光彦正在客厅。寡居的母亲雪江刚从房间里出来,表情像是刚摆脱烦闷的心情,就在这时----
雪江和浅见很少像现在这样面面相觑顾盼无言,虽然两人住在同一个屋檐下,而且是货真价实的亲妈和亲儿子的关系。
对浅见光彦来说,母亲雪江是他在这个世界上最大的天敌。浅见都已经三十三了,却到现在都没能从父母的家中独立出去。说来自己是客,不经意间撞上母亲睥睨的目光是最可怕的事情。
浅见家很久之前就过渡到了长子阳一郎掌家的时代。所以对雪江来说,自己这个不争气的二儿子给大儿子一家带来了莫大的麻烦,这让雪江每日都很发愁。
母亲每次一看到二儿子的脸,就会违心地碎碎叨叨「赶紧找个正经工作,独立起来吧」,想这样斥责儿子也是人之常情。但是不管怎么斥责就是不起一点儿效果,母子二人都为此心烦已久。
所以雪江和浅见互相都在尽可能地避开单独相处。正因如此,深夜的客厅里现在只剩下他们两个人,说是偶遇也不为过。女佣须美子才刚做好茶泡饭,晚归的浅见又拜托她去放洗澡水,就这一会儿功夫,雪江也出现了,说着「须美,帮我贴一下易利气(一种膏药贴)吧」。
须美子刚去帮浅见准备洗澡水,没听到雪江的吩咐,也就没搭腔,雪江周围的空气有点凝固。
奇妙的是,这个时候雪江和浅见两个人虽然都很慌张,但是好像都不应该各回各屋。回屋的话,就有种把后背暴露给了敌人的感觉。
浅见还好,只要装作专心吃茶泡饭就没关系,但是等着贴易利气的雪江就等得非常尴尬。雪江揉了揉酸疼的脖子,意味不明地发了句牢骚「时针已经指到十一点了啊」。
「对不起」
浅见先道了句歉。
先生の教えをお願い致します。
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本帖子最后于 2024/12/8 18:27:08 编辑 ]
靡不有初,鲜克有终……