栗林公園駅の構内で、行き先別料金表示を見た。弓岡が持っていたという「140円区間」は最低料金で、上りは「高松築港」、下りは「太田」までが乗車区間であった。
ただし、上り線で一つ先の瓦町駅では、琴電志度線と長尾線が分岐していて、志度線に乗り換えると三つ先の沖松島駅まで、また長尾線でも三つ先の林道駅までが一四〇円区間になっている。
要するに、その区間には高松市のかなりの部分が網羅されていることになる。電話帳と首っ引きで、弓岡の会おうとした人物を特定するのは、相当なエネルギーを必要とする作業になることだけは確かだ。
第一、ことによると、弓岡は単に高松築港駅へ向かい、そこからJRで東京へ帰る電車に乗るつもりだったのかもしれないのだ。
しかし、弓岡は結局、電車には乗らなかったのである。乗ろうとして買った切符をポケットに突っ込んだまま、死んだのである。
弓岡はなぜ電車に乗らなかったのか――。
浅見は栗林公園駅の自動券売機の前に立って、140円区間の切符を買い、改札口へ向かう途中で振り向いた。
弓岡もそして振り向いたのだ。振り向いた視線の先に「誰か」がいた。いや、誰かに呼び止められたのかもしれない。
そしてその瞬間、弓岡の運命が変わった。
弓岡は踵を返して、「誰か」と行動を共にすることになった。
おそらくその人物こそが、動物園で待ち合わせた相手だったに違いない。何かの理由で、待ち合わせ時間に遅れ、弓岡を追って栗林公園駅まで来た――。
そして……。
そこで、浅見の思考は空白になる。ここから東京まで――聖林寺の鐘に顔をぶつけ、隅田川上流の淀みに死体となって浮かぶまでの弓岡の意識が、浅見の中で途切れてしまう。
浅見は改札口を入った。これから先、空白を埋める作業は、やはり警察の手を借りるしかなかった。
浅见看向栗林公园站里张贴的票价表,弓冈所持的“140日元区间”车票是最低的那一档票价,乘车区间上行最多到“高松筑港”,下行最多到“太田”。
但是,在上行线路的其中一个站点瓦町站上,分出了两条支线——琴电志度线和长尾线,这也就意味着持此票也可以换乘另外两条线路继续乘坐三站,到达志度线上的冲松岛站或者长尾线上的林道站。
总而言之,这张车票的乘车区间覆盖了高松市相当大的一片区域。要想对照着电话簿找出弓冈想要相见之人,那是相当地耗时费力。
也说不定弓冈只是单纯地想去高松筑港站,然后乘坐JR(日本铁道公司运营的铁路线)回家而已。
但是弓冈终是没能坐上电车,他把车票揣进兜里之后不知何时就横死了。
弓冈为什么没坐电车呢?——
浅见站在栗林公园站的自动贩票机前买了140日元区间的车票,之后,在去往检票口的半道回首望去。
弓冈也曾这样回首望去,视线的尽头站着某个人。不,弓冈也可能是被谁喊停了。
然后就在这个瞬间,弓冈的命运彻底改变了。
弓冈回转脚步,和某个人一道向远处走去。
想必这个人就是弓冈在动物园里等待的那个人。他由于某种原因没能按时赴约,于是追着弓冈来到了高松筑港站。——
然后……
浅见的大脑在此时陷入了空白。浅见脑中弓冈的意识中断了,弓冈从这里到东京——又在圣林寺碰钟而死,然后尸体在隅田川上游的河湾上被发现——浅见难以为这些事件找到合适的原因。
浅见进入了检票口。之后在空白中寻找线索的任务,果然还是要借警察之手来完成。
老师,时间过得真快,不知不觉已经要进入第三章《可笑的美谈》了。
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本帖子最后于 2025/3/4 14:14:24 编辑 ]
靡不有初,鲜克有终……