「ええ、そうですけど」
  「あそこはたしか、八本松カントリークラブがあるのでしたか」
  「そうそう、よう知ってますなあ」
  「ええ、ちょっとだけゴルフをやるものですから」
  浅見は完全に向き直った。
  「結婚してずっと東広島で暮らしとったのですけど、両親が亡くなった後、あそこに広島大学が来て、土地を売ってしもうたし、うちの人があの会社に勤めるようになったもんで、こっちに引っ越してきたのです」
  「ご主人は富山県のご出身なのでしょう。奥さんとはどこで知り合ったのですか?」
  「えっ、主人、富山県言うてましたの?珍しいわァ、誰にも言わんようにしとけ言うとったのに……そうです、富山県の高岡で生まれ育ったのだけど、根っからの広島の人間になってしまいたい言うて、結婚と同時に本籍地もこちらに移しました」
  「なるほど、つまり広島人としてこの地に骨を埋める覚悟を固めたのですね。よほどこの土地と、それから奥さんにほれたのでしょうねえ」
  「ははは、ほれだらいいのじゃけどねえ」
  夫人は男のような笑い方をした。
  「出ましたねえ」
  島田は一歩、外に出たとたん、我慢しきれないとばかりに言った。
  「やっぱり高岡ですよ。高岡……何なのですかねえ、これは……」
  上擦った口調だが、最前までの力強さは感じられなかった。むしろ、どちらかといえば震えがちのようにさえ聞こえた。武者ぶるいではなく、不安に戦いているといったところらしい。
  全く、こうまで「高岡」が出そろうと、何やら得体の知らぬ不気味なものの気配を感じてしまう。
  とにかくただごとではない。
  「高岡か……」
  浅見も重苦しい気分でつぶやいた。行ったことのない北陸の古い町が頭に浮かんだ。
  “嗯,是的……”
  “八本松乡村俱乐部好像就在那里吧?”
  “没错,您对东广岛很了解嘛。”
  “嗯,因为偶尔会打一下高尔夫。”
  浅见完全转过了身。
  “我们结婚之后就一直在东广岛生活。后来双亲过世了,正好广岛大学要拆迁过来,我们就索性卖掉了土地。再后来我先生到了现在的公司上班,我们就搬来这里了。”
  “您先生是富山县人吧,是怎么和太太您相识的呢?”
  “啊?我先生连他是富山县人都告诉你们了吗?真稀奇啊,之前明明说不让我告诉任何人的……没错,他是土生土长的富山县高冈人,但是他说他想彻底变成一个广岛人,结婚的时候就把户籍也迁到这儿来了。”
  “原来是这样啊,看来他这个‘广岛人’已经做好了在这里落叶归根的准备了。他真是深爱着这片土地,也深爱着太太您啊。”
  “哈哈哈,这么说来也挺好的啊。”
  畑谷太太笑的很豪爽。
  “问出来了啊。”
  岛田刚踏出畑谷家的大门,就迫不及待地说道,
  “果然是高冈。高冈……究竟是怎么回事呢?”
  他的声音有些尖锐,已经没有了先前的气势。声音听起来甚至有些颤抖——不是因为高兴,倒像是因为不安而颤抖。
  到目前为止,线索纷纷指向了“高冈”,扑朔迷离的案件变得更加诡异了起来。
  事情绝不简单。
  “高冈……”
  浅见沉沉低语。那个不曾去过的北陆古镇浮现在了他的脑海里。 
 先生の教えをお願い致します。
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本帖子最后于 2025/6/4 13:58:25 编辑 ]
靡不有初,鲜克有终……