64 男の部屋
男、スケッチブックを手に取り、いつものように絵を描きはじめる。しかしそれは少女の顔でなく、青年の顔だ。
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壁に貼られていた少女の画の隣に、青年の画が貼られる。
窓のカーテンの隙間から外をのぞき、懸命に鉛筆を走らせる男。
青年の美しい顔がスケッチブックに描かれていく。
男の声:長く見つめることができるぶん、彼女よりも彼の顔の方が上手くなっていきました。彼はどうにも鈍感な人で、僕がいつも彼を見ていることに最後まで気づかなかった。
玉緒の声:最後?
64 男人的房间
男人拿过素描本,和往常一样开始画画,不过这次画的不是少女的脸,而是少年的脸。
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男人把少年的画贴在墙上,旁边就是少女的画。
男人一边透过窗帘的缝隙向外看,一边用铅笔认真地画着。
素描本上少年英俊的脸庞越来越清晰。
男人的声音:因为能一直观察着他,所以跟那个女孩相比,他的脸我画的好多了。他到底是个迟钝的人,到最后都没发觉出来我一直在看着他。
玉緒的声音:最后?
65 中庭 噴水の前(夜)
玉緒、男のほうへ顔を向ける。
玉緒:彼と彼女は別れたの?
男:そうだね。二人は別れ別れになるわけだけど。
男、息をすうっと吐く。
男:彼は死んだんだ。バイクを止めていた所にトラックが突っ込んで。
65 院子里 喷泉前(夜)
玉緒转头看向男人。
玉緒:他们分手了吗?
男:是啊。他们两个人的确是天各一方了。
男人长长地吐了一口气。
男:他死了。因为一辆卡车朝着他停摩托车的地方撞了过去。
66 ピアノ教室の前
灰色の煙が上がっている。
教室から少女が飛び出してくる。
倒されたバイクの下から、青年の長い脚が伸びている。
駆け寄る少女。大声で何か叫ぶが、声は聞こえない。
66 钢琴教室前
燃起滚滚浓烟。
少女从教室里飞奔出来。
倒地的摩托车下面压着少年长长的腿。
少女跑过来,声嘶力竭地喊着什么,但是却没有声音。
67 男の部屋
救急車の音が聞こえている。
カーテンを閉め、その場にうずくまる男。
そのわきには、さっきまで男が書いていた青年の絵が落ちている。
男の声:それから二度と、彼女はピアノ教室には来なかった。
男の書いた青年の絵の上に、鼻血がぽたりと落ちる。
67 男人的房间
传来救护车的声音。
窗帘被拉上了。男人就地蜷缩着坐在地上。
旁边散落着男人刚刚还在画着的少年的画。
男人的声音:从这以后,那个女孩再也没来过钢琴教室。
一滴鼻血啪嗒滴落在男人画的少年的画上。
68 病院 廊下
両目にガーゼを貼った樹生が白い杖を突きながら歩いている。また慣れず、ゆっくりとした動き。
と、反対側からサングラスをした向日葵が歩いてくる。
二人、すれ違う。
二人ともお互いに気付かない。
振り返ることもないまま、二人の距離は離れていく。
68 医院 走廊上
樹生两眼包着纱布,正拄着白色的拐杖走着。因为还没习惯,走得很慢。
这时,对面走来了戴着墨镜的向日葵。
两人擦肩而过。
两人都没有注意到对方。
两人头都没回一下,距离越来越远。
先生の教えをお願い致します。
靡不有初,鲜克有终……